概要
ショパンの代表作の一つとして親しまれている曲です。また、小さいうちから習い事としてピアノを始めた子どもたちにとっての登竜門であり、この曲を弾けるということは「ピアノが得意」と言って何ら差し支えないでしょう(実際この曲に行き着くまでに半数以上がピアノを辞めます)。
本来は「Minute Waltz(小さなワルツ)」と言われるくらい小規模な作品です。とはいえ大部分が速いパッセージで構成されているため、まだそんなに速い曲を弾いた経験がなければ、なかなかの重労働(?)となるでしょう。
演奏に取り掛かる前に知っておくべきこと
ワルツ作品に取り組む際欠かせない概念が3つあり、「強拍と弱拍」、「へミオラ」そして「1小節1拍の速いワルツ」をきちんと知った上で取り組むとよりスムーズに上達がのぞめるでしょう。
「へミオラ」とはスペイン発祥とされており、バッハの時代から使われている、実は古くから存在するリズムの概念です。端的に「拡大された3拍子」と言うことができます。

この曲でへミオラが出現する場所は主に主題であり、しかもへミオラ風にしようと意識しなくてもそう弾けてしまうため気づきにくいのですが、きちんと認識して弾くとスピードアップはたやすく感じられます。
「一小節一拍のワルツ」に関して。ワルツには大きく2種類あり、単純に3拍子を強拍―弱拍―弱拍と数えるゆっくりとしたワルツ、強弱拍はあるものの非常に速いテンポなので1小節に1拍しかないように感じられるワルツ、と大雑把には分けられます。
この曲は勿論後者であり、同時に速いワルツは大きなフレーズ感で考える必要があります。2小節~4小節のフレーズを意識することによって、テクニック的にもより流れるように弾くことができるでしょう。
細かな演奏ポイント
前半
出だしのトリルは奏者によって弾き方が様々あるでしょうが、「ラシラシラ」と五回打つとよいでしょう。トリル終了後、すぐにインテンポにもっていくのではなく、ヘミオラがはじまる3小節目より加速させてインテンポまでもっていくと、序奏の単旋律も優雅さが増します。

5小節目以降、1小節1拍のワルツのリズムとなりますが、少し俯瞰してみると2小節で一つのまとまりになっていることに気が付きます。1小節目の一拍目を少し重いタッチで弾き、2小節目の一拍目は軽めの強拍としてとることで、リズミカルな流れを終始循環させることができます。
更に大きくとってみると4小節(小楽節)でワンフーレズ、8小節(楽節)で大きなフレーズというふうに、一種の入れ子構造の様になっています。それぞれの規模に応じて細かく音楽の流れを計画立てていくとよいでしょう。
上に掲載した楽譜にもあるように、5小節目からの4小節間で少しずつテンポを加速させていくテンポルバートを用いましょう。左手の第一音目を少し重くとることがコツです。
9、10小節目はトリルの影響でやや弾きにくくなっています。無理に行こうとせず、毎回フレーズ終わりに軽めのルバートをかけてテンポダウンし、次のフレーズに向かう前にほどよく息継ぎができるとよいでしょう。
12から13小節目の移り変わりは、序奏を除いた最初の楽節が終わるタイミングであり、再び第一主題が繰り返されます。ここではより大きなブレーキをかけ、飛び込まないようにしながら一回目の主題と同様徐々に4小節間でスピードアップをしていきます。
2回目の主題を終えた後、21小節目より第二主題が始まります。21小節に入る直前、細かく言うと右手半音階では大幅なブレーキをかけて、次のパートにはいる準備をします。
この部分も2小節で一つのリズムのサイクル及びメロディの最小単位、4小節で一つのパターン、8小節で大きなフレーズ、それが2回繰り返される、という構造となっています。

29小節目より2回目が繰り返されますが、左手の伴奏、音階の下行型が少し変化しています。流れとしては前半部と同じですが、最後の35小節目はたっぷりと3拍子を刻んであげると、大きなフレーズの枠組みの最後としてワルツらしく優雅に終始できるでしょう。
