前置き
前奏曲集第1巻に収録されている、数あるドビュッシーの名曲のなかでも一般的にも広く知られており、取り組みやすく親しみのある楽曲です。演奏時間は約2分と短い曲ですが、ドビュッシーの作風のエッセンスが凝縮されています。
参考演奏
冒頭
調性はフラットが6つ付く変ト長調となっています。「ファ以外は全てフラット」と考えると調号の付け忘れを防げるでしょう。冒頭、仏語で「sans rigueur」(直訳:厳格さ無しで、つまりリラックスして)とあるように、厳格なリズムを刻むことなく、緩やかなルバートを各フレーズに散りばめる必要があります。また、全体として付点4分音符以上の音価は、間伸びすることはあっても決して短くならないようにカウントしてください。
主題のフレーズは中心で少しテンポは前向きにゆき、終わりでは緩めのブレーキをかけます。2小節目3拍目はフレーズが途切れますので、そのまま行こうとせず軽めの息継ぎをして裏拍にあたる和音のテヌートに重さをおきます。
6小節目3拍目の左手和音は物理的に同時に打鍵が不可能なので、「ミ・シ」を先に鳴らし「ソ・シ」を右手の和音と同時に打鍵します(31小節目も同様)。

「Cédez」とは・・・?
ドビュッシー作品の曲中に多く出てくる「Cédez」という単語ですが、元の意味は「譲る、譲歩する」などの意味であり、本来音楽用語ではありません。Larousse(フランスの国語辞典)の音楽用語版によると、「もとの速さの軽いたゆみ、主にドビュッシーの楽曲で多用される、ritenutoと同義」とありますので、「段々ゆっくりする」と解釈して問題ありません。加減としてはほんの気持ち程度(リタルダンドほどではない)と考えるとよいかと思います。
中間部
12小節目冒頭アルペジオは直前テンポを落としたまま弾くと焦りが無く弾きやすいでしょう。最高音部のミからテンポに戻し、音型が上行するに従ってややテンポを巻いて、最高音の♭ソからの下行で緩みます(15~16も同様)。
19小節目からのUn peu animé では、あからさまに速度を変化させるというよりかは、3小節にわたって上行の音型で多少速くする程度でよいでしょう。毎回3拍目で緩ませることにより、速度のコントロールができます。

後半部
24小節目からはsans lourdeur(重さなしに)とありますので、毎回の和音をたたきつけず、なるべく鍵盤に重心をかけたまま這うようにフレーズを紡ぎます。なるべく指をぎりぎりまで鍵盤につけておくようにしましょう。
33小節目「ささやくように、少しずつゆっくり」とありますので、類似のパッセージである14小節目より一段階ほどゆっくりの速さで。その速度を引きずりつつ、最後の小節までperdendosi をかけていきます。33~34は極力滑らかなフレーズを意識するため、多少運指にこだわる必要があります。

わからないときは・・・
本稿は、楽譜を自分で読むための視点を示すものです。
実際の練習設計や個別の疑問については、レッスン内で扱っています。
