M. ラヴェル作曲:「水の戯れ」【ピアノ曲解説|楽曲構造と演奏ポイント|書込み楽譜付】

INDEX

概要

フランスの作曲家ラヴェルの代表作の一つです。

その前の時代の絶対音楽や詩的で物語風な情緒的音楽とは一線を画す、印象主義時代の音楽の象徴ともいえる作品です。 

演奏に取り掛かる前に知っておくべきこと

冒頭から終始細かで流れるような水を彷彿とさせるパッセージが続きます。

指先は固く細かなタッチで弾きますが、機械音のようにならないためにもフレージングを意識して強弱をやや付けて弾きましょう。繊細なコントロールが必要です。

拍感に関しては、難易度の高い楽曲なので最初は8分音符ずつ取るなど拍を細かくして譜読みをすることをお勧めします。

ただしある程度指が動きを覚えてきた段階で、上に掲載した楽譜に記載の通り四分音符を一拍とし、さらに強拍と弱拍の感覚をつくって2拍でひとつのリズムのサイクルを意識して弾けるとよいでしょう。より音の流れがスマートになり、水の緻密さを演奏上で表現できるようになります。

参考演奏

細かな演奏ポイント

序盤①(1~18小節目)

全体的なテンポ感は、基本的に均一である方がよいでしょう。フレーズ毎にルバートをしてしまうと流れが阻害されてしまいます。6小節目の64分音符のパッセージなどではやや緩めることは、主題回帰のための良いニュアンスを生み出すので多少息づかい程度に取り入れたいところです。 

9小節目は主題が反転しています。より高音部にいくため、繊細な指先でピアニッシモの音をコントロールしましょう。10小節目の3拍目より、9小節間に渡ってドラマティックな音楽の流れが起こります。

11小節目からは推進力をともなった音楽の流れになるとよいでしょう。具体的には、毎フレーズ少し加速しては次のフレーズに移るときにリセットするような感覚です。人間は錯覚しやすいので、毎回細かなフレーズで加速しては戻し、を繰り返していると全体的にどんどん速くなっていっているような気に(実際にはリセットしているので速くなっていない)なるため、それを利用します。

13小節目ではその方法をとりつつ実際に全体的なテンポ感は速くしていきましょう。

12小節目はインテンポから抜け出して駆け降り、最後でややブレーキをかけ、次の小節のバスを重厚な音で発音するためにしっかりと狙いを定めて打鍵しましょう。バスの音を出した後はペダルを1小節間しっかり維持し、響きの中で左手のメロディをやや鋭く打鍵します。

その後遠近法的なデクレッシェンド(打鍵の奏法を変えずに音量を弱めるだけ)をして再び遠近法的にクレッシェンドをし、また遠ざかっていく、というように絵画的な強弱法で18小節目まで決してテンポを緩めず弾きとおします。

序盤②(19~28小節目)

19小節目に入る直前の装飾的パッセージにはrapide(速く)と書いてありますが、あまり額面通り受け取らず軽いタッチでさっと弾くとよいでしょう。

19小節からは第二部の始まる28小節手前まで大きな音楽の流れを感じながら弾きましょう。

まず19~20小節目は左が右手にかぶさる形で弾くのでやや態勢維持が難しいと思います。左手は上からポンポンと手首を柔軟にしつつ落として打鍵することによって、右手の伴奏の動きを邪魔せずに明確にメロディを主張することができます。

とはいえ、ここではあまりフレーズ感を出そうとせず、音ひとつずつを明示する程度に留めておくとよいでしょう。4拍目のスラーだけは強調し、記譜されているとおりやや大げさなデクレッシェンドを行いましょう。 

21小節目からは波のうねりのような左手アルペジオが上下行していきます。前の小節で現れた主題の弾き方とは対象的に、記載の通りフレーズ感をもって弾きます。22小節目は次の小節に向かって規模を大きくしていく過程のフレーズです。左手アルペジオ下行にともない鍵盤への圧力を強め、音の質量(勿論比喩です)を増していきましょう。

23小節目は一旦音量を落として、小節の最後に向かって重厚なクレッシェンドを。ややテンポ感は引っ張るように遅くなるとよいでしょう。

次の小節へはいきなり移らず、一瞬の間が生まれるとよいです。24小節目からの左手は弾きにくいですが、しっかり独立して動くように訓練しましょう。

フレーズ毎にしっかりと強弱を行い、なるべくテンポ感は維持し難しいパッセージを弾いている風に見せないよう涼しい顔で弾けるのが理想です。右手もフレーズは左手に依存しておらず。両手がそれぞれの役割を全うするように動くことが美しい流れを作るためのポイントです。

26小節目のトレモロは、指定された数だけ弾きましょう(1音32分音符なので、32回)。音域が高音帯になるので、激しいタッチでたたくのは躊躇するかもしれませんが、キンキンと響く音で印象的に弾きましょう。アクセントの音もしっかりと打鍵して。 

27~28小節目は拍感を忘れて一気に駆け抜けるようにしましょう。多少テンポは前のめりになるほうがダイナミックになります。その後のリタルダンドは急ブレーキをかけることを忘れずに。 

1 2 3

執筆者

ピアニスト・作曲家。パリ・エコールノルマル音楽院ピアノ科高等教育課程および高等演奏課程を修了。在学中にブルーノ・リグット氏に師事。国内外のコンクールで実績を重ね、国内各種ピアノコンクールの審査員も務める。
ピアノをはじめ、ヴァイオリン、和声、音楽理論、作曲法など幅広い分野の指導を行う。演奏技術や表現・解釈の習得だけでなく、音楽構造の理解や創造的思考も重視した総合的な教育を実践している。
演奏家・作曲家としての経験を教育に活かし、フランス作品を中心とした幅広いレパートリーや作曲創作の現場で培った知識と技術を、生徒の学びに直接還元している。

公式サイト:https://masakazu-shiokawa.com

INDEX